四国88ヶ所を順拝することを遍路といいますが、その由来については
弘仁6年(815)弘法大師が42歳のときに、御自身と人々の厄難を除くため
四国霊場を開かれたと伝えられ、各札所の縁起にも弘仁年間の開創が記さ
れています。また、この88カ所をはじめて巡り、遍路の祖といわれる人としては 衛門三郎の伝説があります。このほか弘法大師ご入定後、大師のお弟子の
一人真斎が大師の遺跡を遍歴したのがはじめとか、同じく大師の弟子となった真如親王によってはじめられたとか伝えられますが定かでありません。大師ご入定後は大師心仰が盛んになり、平安末期ごろからは真言宗の僧侶達が大師ゆかりの地を遍歴することが行われるようになって、
四国88カ所もその修行の道場として順拝が盛んになりました。
「保元物語」その他には西行法師の四国遍歴の記事があり、その歌碑の
ある札所もみられます。江戸時代に入ると、それまで僧侶がほとんどあっ
た遍路も、広く一般の人々に普及しこの人達は・お遍路さん・の愛称で親
しまれ、順拝は増々盛んになりました。四国から程遠い江戸やその他にも 88カ所が作られ、特に香川県小豆島や愛媛県大島、山口県大島など、瀬戸内海の島々には多くのミニ88カ所が誕生して、春の農閑期にはお百姓
さん達の遍路でにぎわい、信仰と慰安を兼ねた順拝が盛んになりました。四国88カ所の道のりは1440キロに及び、昔のように徒歩で巡れば50〜60
日はかかる長旅ですが、近年ではバスや乗用車を利用する人がほとんどで
、それでも10日はゆうにかかります。その場合でも徒歩によらざるを得ない難所が多く、しっかりした信仰心と意思がなければ88番まで打ち終えて結願に至ることは困難です。 年々四国順拝が盛んになるのは「同行二人」の文字どおりお大師様のお
導きによって、現在のもろもろの不安をのぞき、強いちからをさずけて戴
けるという大きなご利益のお陰に他なりません。
88という数字については、人間の厄年すなわち男42・女33・子供13の年の合計であるとか、人間の88の煩悩を表わすとか、弘法大師が唐から持ち帰った釈尊遺跡八塔の霊土にちなみ、その八をかさねたとか伝えられますが、定説はありません。 四国の霊場は徳島県
(阿波) 23カ寺、高知県 (土佐) 16カ寺、愛媛県(伊予)26カ寺、香川(讃岐)
23カ寺の計88カ寺で、徳島県を発心の道場、高知県を修行の道場、愛媛県を菩堤の道場、香川県を涅槃の道場と呼び、これを順に廻ることによって大師が仏門へ入門され、入定に至る
までの足跡をたどることが出来ます。お遍路は霊場へお詣りするとお堂の前で般若心経或いはそのお寺のご詠歌をとなえそのしるしに、昔は氏名住所を書いた薄板をお寺の柱に
打ち付けましたが、現在では小さな紙片に変わっています。今でもその
お寺を・札所・、お詣りする事を・打つ・、納め札を・納札・、ご朱印を
頂く所を・納経所・、その帳面を・納経帳・、お軸を・納経軸・、札所を
順番に参拝することを・順打ち・逆を・逆打ち・といわれ、昔からの言葉
がそのまま用いられています。
八十八ヶ所参拝の作法
山門に入る前に一礼し、まず本堂に行きローソク・線香をあげ、白札(般若心経の写経)を奉納し、般若心経を唱える。次に大師堂に行き、同じ事を繰りかえす。最後に山門を出る時に、一礼をして次の寺へ向かう。 |
最低必要な準備物
白衣 |
お遍路さんの正装。俗世を離れて心の清らかさを象徴する浄衣。 |
輪げさ |
お坊様の法衣を簡素化した物で、寺参りのエチケットです。 |
金剛杖 |
弘法大師と同行二人で聖地を踏み、大師の御加護で無事に巡拝出来ると伝えられています。 |
念珠 |
お手持ちのものをお使い頂いても充分ですが、お参り用は普通、尺二寸の物を使用します。 |
白札 |
本堂と太子堂に奉納致します。 |
持っていると便利のもの
特に山谷袋は巡拝中のハンドバックになりますし、前掛けは白衣の上からすると腰がしまり気持ちのよいものです。特鈴は、道中の安全を守る魔除けの役割をすると伝えられています。輪ゲサ止めは、輪ゲサがずれないように首に止めます。経本は、般若心経を持ってください。 |
納経(御朱印)の用品は三種類
@納経軸 |
家宝として子孫に残していく大事なものです。 |
A納経帳 |
お遍路さん自身が来世の旅路に持参するものです。現世でどれだけ功徳をしたかの証といわれています。一度買われると、その納経帳を一生使用し重ね印をしていきます。 |
B御朱印用白衣 |
納経帳と同じく来世の旅路に持参するものです。 |
弘法大師ゆかりの四国霊場をめぐる巡拝は、老若男女を問わず、宗派をこえ多くの人々の篤い信仰心により、たとえ一人でも弘法大師と同行二人の二人連れの旅です。ひたすら御経を唱え、いちずに御加護を念じながら、あらゆる欲を捨て煩悩を転じて、想いをかなえる満願成就の旅となります事をお祈り申し上げます。 |