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作品 68cm×103cm / 表装 91cm×186cm
涅槃とは、梵語(古代インドのことば)で、消滅とか寂滅と訳します。また、迷いや執着を断ち切って、一切の束縛から逃れる最高の境地をいいます。同時に仏陀の入滅・死を意味するようになりました。日本では、平安時代以後、釈迦入滅の日の旧2月15日を涅槃会といって、釈迦の遺徳をしのびました。
涅槃図は、インド以来の仏画の一主題で、沙羅双樹(釈迦が涅槃に入るとき、その四方に二本ずつあった沙羅樹。日本でいうナツツバキのこと)の間の床上に、諸菩薩を始め一切の生類が、嘆き悲しむ光景が描かれています。また右上には、摩耶夫人(釈迦の母)が、雲に乗って現われています。本図は、伝統的な図柄を踏襲しながら、奥行きの表現に多大の関心をはらい、この場面へ集まる諸天、諸王の激しく泣き悲しんでいる様を表現しています。
仏教的に、釈迦の涅槃とは、釈迦の宗教的帰結であり仏教の本質を示す重要な情景です。その情景を造形化した涅槃図には、釈迦という偉大な宗教的指導者の死という事実に対する厳粛な雰囲気が漂っており、仏教美術はその釈迦の教えの本質を、様々な形で造形化してきました。殊に涅槃図は釈迦という一人の人間の死を扱う場面であるだけに時代を超越して表現されてきた主題です。 |