金碧障壁画 襖絵修復例
 
 作品全体が金箔地に岩絵具で揮毫された約150年前の金碧障壁画ですが、写真の通り損傷が激しく金箔や岩絵具も定着が不安定な状態で随所に剥落しており、作業が困難で予想以上に時間と技術が必要な仕事となりました。 
 この作業の方法としては、襖本体より作品を外して剥落仕掛けの顔料の定着保護を薄膠で何回も塗布しながら定着させました。後に手漉美濃紙で裏打ち補強をして絵師による破損している部分の修復をすすめてゆきました。また、金箔部分も大きく欠損しており如何に同化できるか試行錯誤の末、現状の下地の間合紙に金箔を取り止め、本金砂子を梨地に振りその後、古色で染めて欠損部分を準備しました。次に、引手ですが現存している手打細工引手の損傷が酷く使用出来る半数を洗浄し古色を付けて時代引手に戻し、不足している引手は新しいものを同色に染め時代感を作りました。この襖は、作品と引手を使用し他は全て新調するという工法でしたので、下地は特注の杉骨下地に角板を付け、力骨を入れ下張りには手漉きの和紙を張り受けには美濃掛け・押さえを施しました。縁は、新しい黒漆塗艶消で特注寸法で製作する襖となりました。

 

修復前




 

特殊加工部材

 

引手は現存している手打細工引手の損傷が酷く半数は引手が無い状況でした。使用出来る物を洗浄し金箔施工後に古色を付けて時代引手に戻しました。不足している引手は新しく作りましたが金箔が合うように同じ古色に染め時代感を合わせて作りました。

  薄手の間合い紙に本金砂子を梨地に振りその後に古色で染め数百年前の金箔を作り、欠損部分を修復しました。右が本物で左が新しく作った本金です。

修復後